翌朝予定の時刻より2時間ほど遅れてビンガムのプライベートジェットが日本を離れた。 原因は主に機体の緊急修理。 相手側にはやむを得ない理由ということで理解を求め、急遽予定していたビジネスランチを回避してのスケジュールに調整されることになった。 そのことをホテルにいる総帥に伝えると、彼はすぐにチェックアウトを遅らせた。そして久しぶりの夫人との逢瀬をゆっくりと楽しんだようだ。 これでお二人の間で上手くことが運んでくれると良いのだが。 空港に姿を現した総帥夫妻の間に、そう思わせるような何かが芽生えていたのを感じた彼は、良い展開を期待している。 ちなみに出発が遅れた理由ともなった、その修理箇所とは…… 「そんなの、あるはずないじゃないですか。仮にもビジネスに万全を期すビンガムグループが所有するジェット機ですよ。いつ何時も整備は完璧です」 クレイグに随行した越智が飛行プランを見てウインクする。 彼の手によって書き換えられた計画書により、最初から給油の開始予定時刻が2時間ほど遅くに設定されていたのだ。 「まぁ、たまにはこういうこともあります。私たち秘書はそのすべての事象に常に臨機応変に対応していますから、ご心配なく」 こうして彼の評価はまた一段と上がったのは言うまでもない。 HOME |