それから数日、嶺河は真音の別荘に滞在した。 二人は夜となく昼となく触れ合い、愛し合い、そして語り合った。 どんなに身体を重ねても飽くことなくお互いを求め、そしてまた惜しみなく与えた。 嶺河は真音に自宅に帰るように説得したが、彼女は頑として首を縦に振らなかった。 このことを除けば、ここで過ごしたひとときは、彼にとって夢のような素晴しい時間になった。 そして数日後、彼は独り東京へと帰る車を走らせていた。 結局連れ帰ることはできなかったが、真音はあの場所からどこにも行かないと約束した。 これから当分は週末だけの逢瀬となりそうだが、それでも彼女が彼を待っていると思うとそれで満足し、納得している自分がいる。 彼は快調に高速を走りながら思った。 また次の週末にも同じ道を彼女の元へと走っているだろう、と。 しかし、彼にはまだ予期せぬ災難が待ち構えていた。 急に会社を飛び出し行き先さえ知らせていなかったため、社内ではスケジュールの調整で大混乱になっていたらしい。 兄の大地が事の成り行きを見守っていたお陰で何とか騒ぎは収まったが、後で秘書の高野にこっ酷く注意され、嫌味を言われた上に、しばらく行き先を告げずには社外に出してもらえなかったという。 もちろん、その翌週は余分なことを考える余裕がないくらい、タイトなスケジュールがきっちりと組まれていたことは言うまでもない…。
雪のミラージュ本編 〜 終 〜 17からの続編に続く HOME |