chapterT 香澄のstory epilogue
今、彼がくれた花束はサイドテーブルに置いてあった。 その一見変わったブーケは、花屋さんで事情を話して特別に作ってもらったのだという。 最初はメインと脇役、逆の配置に訝しげな顔をした店員さんだったが、私の名前が「カスミ」だからと言うと快諾してくれたのだと聞いた。 「今日の主役はカスミだから」と言いながら、彼がこれをくれた時は嬉しくて感激して涙が出た。 このプロポーズの時にもらった花の思い出は、私の一生の宝物になりそうだ。 「ねぇ、慎介。どうしてあの時、急に迫ってきたの?」 彼の腕枕で気だるい余韻を楽しみながら、ふと気になっていたことを聞いてみる。 プロポーズに頷いた彼女は、食事の後、彼の部屋に連れ込まれた。 そしてそのままベッドに直行だ。 「一晩に半ダースのコンドームが使えるかどうか、試してみたくなったから」 突拍子もない答えに、思わずベッドから起き上がった。 「ついでに『発情した牡牛』にもなってみたかったし。あ、『種馬』になるっていう手もあったな。ウチは防音がそんなに良くないから、玄関でいたすのは無理だけど」 しゃあしゃあと言ってのける彼を前に、香澄は悲鳴を上げた。 「もしかして、あれ…あれを読んだの」 にやりと悪魔の笑みを浮かべる慎介は、肯定も否定もしない。 「大丈夫、僕だって君の前では『自制心の箍が外れて野蛮な行為に走る』ただの『発情した男』になるんだから」 HOME |